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ブーツィの「ンペッ、ンペッ」に踊り狂った日 — Katsuhiko Sakaguchi
私の愛したアルバム

ブーツィの「ンペッ、ンペッ」に踊り狂った日 — Katsuhiko Sakaguchi

ストーンズの「ダーティー・ワーク」、ミック・ジャガーのソロ。悔しいけど私には満足できるものではなかった80年代後半のストーンズ界隈。そういえばこの時期はPファンク、プリンスにハマっていて、ロックに刺激を感じることはなかったなぁ…。 そんな時に出会ったアルバムがこの「トーク・イズ・チープ」。キース・リチャーズの初めてのソロアルバムだった。永年のストーンズファンとしては、期待感薄くても聴き逃すわけにはいかない。ということでアナログLP(輸入盤)を購入。 「あ、オレのソロね!」って感じのデカ顔ジャケもなかなかいいなと思いつつ、まずはA面1曲目に針を落とす。
目次
  1. 80年代後半、ストーンズ界隈に感じた行き詰まり
  2. A面1曲目に針を落とす — まさかのどファンク
  3. A面の展開 — R&R、ソウル、レゲエ
  4. B面 — ポップな R&R からロールするグルーヴへ
  5. キース流への昇華、そしてグルーヴの正体
  6. 編集後記
Keith Richards『Talk Is Cheap』ジャケット
Keith Richards『Talk Is Cheap』(1988年) — キース初のソロアルバム

80年代後半、ストーンズ界隈に感じた行き詰まり

ストーンズの「ダーティー・ワーク」、ミック・ジャガーのソロ。悔しいけど私には満足できるものではなかった80年代後半のストーンズ界隈。そういえばこの時期はPファンク、プリンスにハマっていて、ロックに刺激を感じることはなかったなぁ…。

そんな時に出会ったアルバムがこの「トーク・イズ・チープ」。キース・リチャーズの初めてのソロアルバムだった。永年のストーンズファンとしては、期待感薄くても聴き逃すわけにはいかない。ということでアナログLP(輸入盤)を購入。

キース・リチャーズ『Talk Is Cheap』輸入盤オリジナル LP(シュリンク+Hype Sticker付き)
シュリンクをまとったまま残る輸入盤オリジナル LP。Hype Sticker に並ぶ "Take It So Hard" "Struggle" "Make No Mistake" "Locked Away" の文字

A面1曲目に針を落とす — まさかのどファンク

「あ、オレのソロね!」って感じのデカ顔ジャケもなかなかいいなと思いつつ、まずはA面1曲目に針を落とす。

ターンテーブルで回る Keith Richards『Talk Is Cheap』の LP
回り始めた一枚。Virgin レーベルの青い三角が、ゆっくりと弧を描く

ええぇー!どファンクかい!しかも聴き覚えのある「ンペッ、ンペッ」ブーツィらしきベースが。さっそくメンバーを見てみると、ブーツィのみならず、バーニー・ウォーレル、メイシオ・パーカーまでいるではないか!

Pファンクにハマっていた私は歓喜して踊り狂うしかなかったな。

キースの人脈におそれいったのと、気に入った音楽はどこかで繋がってくるもんだと感心した。

この曲「ビッグ・イナフ」、ドラムはシンプルなれど、ファンクの手練れが生み出すグルーヴとそれに乗っかるキースのギターカッティング!大いに満足!

A面の展開 — R&R、ソウル、レゲエ

続くA面2曲目、真骨頂ギターリフで始まるR&R「テイク・イット・ソー・ハード」。この曲に限らず、アルバム全体に感じることだけど、ほとんどフィルインなしのタイトなドラムと、リブァーヴ感なしのギターがつくる音像はまさに骨太。

A面3、4もR&Rでノったところで「メイク・ノー・ミステイク」サラ・ダッシュのヴォーカルとメンフィスホーンズのホーンがグッとくるソウルフルな曲。バーニー・ウォーレルのオルガンソロが涙もの…いい…。

A面最後はレゲエ調。「ユー・ドント・ムーヴ・ミー」(お前に心は動かない)は、ミックのことを歌ったものだとキース自伝「ライフ」にあった。

B面 — ポップな R&R からロールするグルーヴへ

B面ものっけからR&R全開。「ハウ・アイ・ウィッシュ」は、次のストーンズのアルバム「スティール・ホイールズ」に繋がるポップなR&R。

しっとりシブいB面4曲目「ロックド・アウェイ」の後半で聴けるリズムとメロディが絶妙に絡まるギター。地味だけど絶対の聴きどころだな。

B面締めは、またもちょいファンキーかつロールする1曲。これはギター弾きまくり、リズム感に圧倒されまくり!

キース流への昇華、そしてグルーヴの正体

『Talk Is Cheap』インナーライナーのクレジット — Steve Jordan, Waddy Wachtel, Sarah Dash, Ivan Neville, Bootsy Collins らの名前が並ぶ
インナーライナーに刻まれた人脈。Steve Jordan、Waddy Wachtel、Sarah Dash、Charley Drayton、Ivan Neville、Bootsy Collins、Bernie Worrell、Maceo Parker、Memphis Horns — キースが呼んだ一流の手練れたち

ストーンズ本体の行き詰まり感、ミック・ジャガーへの不信感のなかで、キースがこの時やりたかった音楽を豪快にぶつけたと思われる。R&R、レゲエ、ソウル、ファンク…を見事にキース流R&Rに昇華する。

グルーヴって音が抜けた間(ま)が作りだすのだね。

1枚を通して聴いてみるとそれがよくわかる。間違いなく私が愛聴するアルバムの1枚である。

(さかやん1962)

編集後記

坂口さん — 「さかやん1962」は、私(ナミオ)がかつてカタログハウスという会社に在籍していた時の同僚で、そして何より、青い時代の大事な音楽仲間だ。今でも、何度か一緒にスタジオでも遊んだ。今はすっかりお偉いさんになってしまったけれど、原稿から聴こえてくる熱量はあの頃のままだ。

THE BOOTS のギター弾きとして「イカすバンド天国」で17代イカ天キングに輝いた彼が、80年代後半に「トーク・イズ・チープ」に出会って歓喜した時間 — その瞬間が、この文章の中に鮮明に生きている。A面1曲目に針を落とした瞬間の「ええぇー!どファンクかい!」という叫び。ブーツィ・コリンズ、バーニー・ウォーレル、メイシオ・パーカー… Pファンクに夢中になっていた彼が、キースのソロアルバムの中にその人脈を発見する。好きな音楽はどこかで必ず繋がっている — これは Album Sweet が届けたい体験そのものだ。

「グルーヴは音が抜けた間(ま)が作りだす」— 実際にギターを弾いてきた人にしか書けない結語。坂口さん、いい原稿をありがとう。また、スタジオで会おう。

Talk Is Cheap

Talk Is Cheap

Keith Richards

1970

Album Sweet で見る →

書き手

さかやん1962

さかやん1962

その昔「イカすバンド天国」という番組で17代イカ天キングになった THE BOOTS のギター弾き。バンド解散後は、老会社員として生きています。ナミオにとって、青い時代の大事な音楽仲間。